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森のどうぶつとの付き合い方              4. サイエンスコミュニケーションとの出会いと実践 

執筆者の写真: Mineyo IwaseMineyo Iwase

更新日:2024年10月10日


2023年7月22日に配信したChatPot 1「森のどうぶつとの付き合い方:池田貴子さん」の内容をシリーズの記事としてお読みいただけるようになりました。第4回は池田さんがサイエンスコミュニケーションの活動に取り組むようになった経緯やどのような心構えで実践されているのかについて伺っています。



(⁎ᵕᴗᵕ⁎) 池田さんはコーステップという科学技術コミュニケーションの研究機関にいて、科学技術コミュニケーターを養成していく立場にもありますよね。

コーステップで、ご自身の研究を発展させていく上で、どういったことに気をつけながら、実践されてきたかということを伺ってもよろしいでしょうか。


( ˆoˆ )/  はい、そうですね。最初、私の専門は生態学と疫学と言ったのですけど。

やはり疫学に関わり始めるというか、こういう動物問題に関わり始めると、そこに住んでいる人間との、人間という動物とのですね。社会との関わりっていうのは、本当に切っても切れない関係にあることに気づいたんですよね。


さっきのエキノコックスの話で、予防法、個人でできる予防法の話をしたのですけど、予防についてみんなが少しでも知っていたら、少し安心して暮らせるのにとか、もう少し安全が確保できるのに。

でも研究者がそういうことを話したりとか伝えたりすることを怠っているのではないかと学生時代に思ったのです。

エキノコックス研究ってけっこう長くて、しかも北大の獣医学部の寄生虫教室なんて、 1番エキノコックス研究の最先端の研究室なのに、その膝元の札幌市民が何の情報も与えられてない時代がけっこう長かったということを知ったんですよ、学生の頃に。なんという怠慢じゃないかと思って。


それで、ドクター(博士課程)の学生の頃にコーステップを受講したんですよね。

伝える手段が知りたかったっていうよりは、どうしたらそういう場を作れるのかとか、どう言ったら、どういうふうにしたら、うまく行政にも働きかけられるのかとか、それはけっこう大きな夢ですけど、 その場を作る、そういうマインドを作るとか、それにはどうしたらいいのか、自分がどういうマインドを身につけないといけないのかということが知りたくて、受講を決めたというのがあります。 

なので、それ以来、対話の場っていうか、そんなに大げさなものじゃないんですけど、こじんまりとしたものを、数打つ感じなんですけど、あの時コーステップを受講しようと思った時から、ずっとそれをやりたくて。

 

そのコーステップ受講中に、実は学位を取りまして。コーステップ受講生の後半はプー太郎というか、バイト生活をしてたんです。ただ、そのバイト生活の時に、フリーランスのグラフィックデザイナーをやっていまして。それは完全に趣味で、デザインとかイラストレーションとかが好きだったので、趣味と実益を兼ねてっていうことでやっていたんです。


当時、サイエンスコミュニケーション、リスクコミュケーション、獣害問題のリスクコミュニケーションがあんまりちゃんとやられてなかったんです。今よりも。 

そこで、そういう相手というか、行政だったり、市民だったり、普通のね、私たち市民だったりしますけど。どうやったら、1番 取っ付きやすく語りかける材料になるかなって思ったら、視覚的なものって有効かなって思ったんですね。

最初はそれぐらいの安易な感じで。私、書くのも好きだしというふうに、そこから始めて、だんだん。

そういう活動していくと、いろんなところから協力依頼も来るし、相談も増えていくんですよね。そうすると、今度はもう伝えるだけじゃダメになってきて。もう相談に乗るだけでもなくなってきて、一緒に、もうそこの人間になって考えるみたいな姿勢じゃないと、課題解決につながらなかったりとか、その地域のよそ者でいてはダメだなっていうことに途中で気がついたのです。


グラフィックデザインを使った、リスクコミュニケーションを今コーステップでテーマにはしているんですけど、 受講生と一緒にそのリスクコミュニケーションの活動をしたり、受講生に教えたりするときは、結局人間同士の関係だから、信頼関係を絶対に崩さないことが大事だと思っています。守秘義務がやはり生じてくるので。

デリケートな問題だったり、うちの公園にキツネがいますっていうことを言いたくないところもあったりするんですよね。そういうことは絶対に言わないとか。あとは、その理屈じゃないところで、なんとなく怖いとか、なんとなく気持ち悪いっていうのは絶対にあるものなのです。


コーステップの受講生は科学を学んでいる人が多いけど。科学的には別に安全なんだけど、いや、そういう問題じゃないんだ、嫌なもんは嫌なんだっていうのは絶対あるわけなので、なんかそこを否定するようなコミュニケーションじゃなくて。いや、あるよな、そういうことっていうのを自分にだってきっと振り返ったらあるじゃないですか。

別に何の菌も持ってない綺麗なクリーンなゴキブリだとしてもなんか嫌じゃないですか。 いやなものはいやという感情みたいなものを排除せずに。 

科学研究って、感情を排除しろっていうふうに訓練されるけど、そこはやっぱり排除しちゃダメだと思っていてリスクコミュニケーションについては。


なので、そういう話を実習の時にもけっこう時間をかけて受講生には話をするようにしてます。 苦情の内容とかをけっこう逐一伝えたりします。こんな相談が来て、そんなこと言ったってしょうがないじゃん的な内容だったりするんだけど。 でも、この人が気になっているんだから、リスクを感じているのは事実なわけだというところをまず認めるところから入ろうと。


お互いの バックグラインと違うから、絶対に理解したりとか、課題は多分解決できないんだけど、その課題解決に近づくための近道は、おそらくちょっと遠回りかもしれないけど、言い分を理解するというか、あ、なんでどういう経緯でこういうふうな 苦情を、ちょっと過激な苦情だったりしても、そういう苦情を持つようになっちゃったのかなっていうのを1回想像してみましょうかねという姿勢を持つというのを大事にしようねとコーステップの受講生には話していますし、私もそれを心がけるようにしています。


(⁎ᵕᴗᵕ⁎)  なるほど。


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