近年の地球温暖化の影響は、ホッキョクグマの繁殖率の低下や死亡率の上昇に表れており、個体群の衰退をもたらしています。通常より北極の氷が溶けている期間が長くなり、捕食動物であるアザラシをハンティングする効率が落ちていることが原因の一つです。
ネパールに棲む3種のクマ、ツキノワグマ、ナマケグマおよびヒグマは、森林伐採などの人工的な環境破壊による生息地の縮小や過剰な捕殺によって個体数が非常に減少してきています。
日本のヒグマやツキノワグマは、人との軋轢問題が数多く発生しています。北海道や東北地域における軋轢の原因の一つに、異常気象によるブナやミズナラなどの堅果類(いわゆるドングリ)の生りが悪く、冬眠前のクマの食物が少なくなった。つまり、食物を求め、クマが人にいる地域に現れ、作物を荒らすようになったと考えられています。
地球温暖化がますます深刻度を増していることは、このようにホッキョクグマをはじめクマたちの生態に強く反映されており、人の生活にも影響を及ぼしてきています。そのような状況にあって、クマの生理や生態が解明されることは、クマの未来、そして人の未来に重要な意味を持ちます。
しかしながら、クマ類はかなり特殊な生理や生態を持っていることや研究者自体が少ないことから、まだまだ充分に研究されていません。
例えば、こんな研究課題があります。
Qクマの食性の変化
・どうしてクマはイヌやネコと祖先が同じ食肉類なのに、草食になったり、肉食になったりするのでしょうか。
Qクマの冬眠のメカニズム
・どうしてクマは長期間にわたる冬眠にもかかわらず、筋肉や骨が衰えないのでしょうか。
・どうして冬期間を通して間断なく眠り続けられるのでしょうか。
・冬眠中、一切の摂食、飲水、排泄、排尿が見られないのはなぜでしょうか、そしてその生理的メカニズムはどうなっているのでしょうか。
・どうしてホッキョクグマの食料が少ない7~8月の夏の期間、代謝を下げて「ウォーキングハイバネーション:歩く冬眠」することができるのでしょうか。
Qクマの妊娠、出産のメカニズム
・どうしてクマは交尾した後、受精卵が着床を起こさないのでしょうか。
・どうしてクマは冬眠中に出産し、冬眠状態で子育てができるのでしょうか。
本当に、クマは不思議な動物ですね。
北海道大学 大学院 獣医学研究院 教授、北海道大学 総合博物館 館長 坪田 敏男さんは仲間たちとこれらの課題に立ち向かっています。そしてさらに解明に向かって研究を加速させたいと思っています。
まず、坪田さんの研究室に在籍するネパールからの留学生と一緒に、ネパールに生息しているヒグマやナマケグマの生態調査をしたいと考えています。
そして、ヒグマの会※1や日本クマネットワーク※2のメンバーと一緒に調査研究により得られた科学的情報を市民にわかりやすく伝える活動を行い、実際に困っている方たちを支援したいと考えています。
※1 ヒグマの会:https://www.higumanokai.org
※2 日本クマネットワーク:https://www.japanbear.org
さらに、全国の若手研究者と共同研究を行い、若手研究者たちの研究や若手研究者自身がさらに飛躍できるよう支援したいと考えています。
坪田先生はこれらの活動を実践するためにクラウドファンディングをはじめました。詳しくはこちらのサイトをごらんください。
サイバコではクラウドファンディングについて坪田先生からお話をお聞きし、Chat Pot「クマと世界と私たち」として公開しています。こちらの方もお聞きください。
みなさんも応援という形で仲間になりませんか?
坪田先生はいろいろな機会を作り、研究成果を多くの人に伝えています。下記にこれまでのクマの生理や生態に関する研究が詳しく掲載されていますので、ぜひごらんください。
第129回サイエンス・カフェ札幌「面白くて眠れないくまの話〜繁殖と冬眠の生理学〜」を開催しました – CoSTEP – 北海道大学 高等教育推進機構 科学技術コミュニケーション教育研究部門 (hokudai.ac.jp)
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