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表現の力で研究と社会をつなぐ

更新日:9月10日

―社会的インパクト表現プロジェクト―


室蘭工業大学では、研究成果を社会につなげる動きを加速させようとしています。そのために研究者一人ひとりが表現していくことが重要と考え、社会的インパクト表現プロジェクトが立ち上げられました。そのプロジェクトを牽引しているのがパブリックリレーションズオフィスです。そのメンバーのお一人、室蘭工業大学ひと文化系領域の山田祥子准教授にサイバコと一緒にニュースレターやワークショップを企画・実施するようになった経緯や今後の活動について伺いました。


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室蘭工業大学ひと文化系領域 准教授 MONOづくりみらい共創機構 パブリックリレーションズオフィス 山田 祥子さん


社会的インパクト表現プロジェクトに関わるきっかけを教えてください。

私が室蘭工業大学に着任したのが2022年の10月1日。その翌月の11月に社会的インパクトタスクフォースのリーダー、木元浩一先生から誘いを受けました。

私は、それまで博物館に勤務していたこともあり、大学と地域のつながりを強めるような仕事がしたいという思いはありました。社会的インパクトの基本的な情報もまったく知らない状態でしたが、その理念に共感する部分が多くあり、木元先生に誘われるままに参加したのかきっかけです。


タスクフォースではどんな議論がなされていたのでしょうか。

最初は、木元先生や臨時補助員として参加している学生たちとの、「社会的インパクトとはなんだろう」とか、「こんなことをしたほうが良いのでは」といった気軽な話し合いから始まりました。

タスクフォースでは、当時副学長で理事の船水尚行先生がスーパーバイザーとして参加するミーティングもありました。そこでは、船水先生が「室蘭工業大学にはもう研究の成果があるのに、それを表現できていないだけ。教職員一人ひとりが表現していくことが重要」と毅然と話されるのが常でした。

そうして、研究者自身が、研究の成果と社会がどのようにつながっているかを表現できるようにしようということが決まっていきました。

また、このプロジェクトを進める組織(現在のパブリックリレーションズオフィス)の在り方についても話し合われました。


サイバコへご依頼いただいた経緯を教えてもらえますか。

パブリックリレーションズオフィスには、社会的インパクトの発信のほかに、ステークホルダーとのサイエンスコミュニケーションを担う役割も期待されていました。そこで、タスクフォースでは、学内で科学技術と社会をつなぐ専門家であるサイエンスコミュニケーターを育てるか、外部に委託するかについても意見を交わしました。そのときにサイバコさんの活動を知りました。しかし、すぐには外部に委託することにはなりませんでした。

話し合いを重ねていくうちに、それぞれ本来の仕事があるため、学内の人員でコミュニケーターを育てるのは現実的には難しいということがわかってきたので、外部に委託する方向へ、次第に意見が傾いていきました。


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「学内の教員向けに社会的インパクトを表現できるようにするためのガイドブック」を作成したいので、相談したいというメールをいただいたのが2024年の6月でしたね。

サイバコさんに、何をどのように依頼するかについては、手探り状態だったと思います。タスクフォースの頃からガイドブックを作ろうという話が出ていたので、そのまま依頼しようとしていました。しかし、ミーティングでサイバコさんから「定期的に発行するニュースレター」と「ワークショップの実施」の提案がありました。ニュースレターでは、室工大が社会的インパクト表現プロジェクトをどのように進めようとしているのか、また研究者の実践事例の紹介が盛り込むこと。そして、ワークショップでは、社会的インパクト表現の理解を深めること。それぞれの目的を明確にし、構成員の目に触れる機会を増やすことで、このプロジェクトの意義が伝わりやすくなるという提案でした。

その提案を受けて、社会的インパクト表現プロジェクトの進め方をもっと柔軟に考えてもよいことに気が付きました。

たとえば、ガイドブックであれば一度作って終わりなので、労力は少なかったかもしれませんが、ニュースレターは定期的に発行する必要があるため大変です。しかし、ニュースレター作成の実績があるサイバコさんに協力してもらえるのであれば、心強いと思いました。

また、「ニュースレターの方が、発信効果が高い」というアドバイスもありがたく、ガイドブックというアイデアに凝り固まっていたところに、新しい風を吹き込んでくれた感じでした。2024年春に始動したパブリックリレーションズオフィスのメンバーも、この提案に賛成していました。



サイバコが社会的インパクト表現プロジェクトに関わったことをどのように感じていますか。

このプロジェクトは「こうありたい」と決めていたというより、探りながら進めている状況ですが、良い方向に進んでいると私自身は思っています。

サイバコさんは、こちらの元々の考えを非常に尊重し、それを引き立てるように仕事を進めてくださいます。押し付けることなどは一切ありません。こちらがやりたいことを際立たせるようにしてくださるので、順調に進んでいると感じています。

もし、私たちが知らないやり方を一方的に持ち込まれて、このプロジェクトを進めていたら、自分たちの主体性も失われていたかもしれません。

ですから、サイバコさんにまずはこちらの話をよく聞くところから始めていただき、元々あったアイデアや素材を生かすように進めてくださることは、非常にありがたいと感じています。


社会的インパクト表現プロジェクトを実践してみて、サイエンスコミュニケーションについてどのように考えていますか。

私自身、サイエンスコミュニケーションを体系的に学んだ経験はなく、理論についても詳しくはありません。関連書籍に目を通すことはありますが、正直なところ難しいと感じています。

ただ、サイエンスコミュニケーションは、時代とともに絶えず変化していく分野なのではないかと感じています。2000年代の後半に私が北海道大学の大学院生だった頃、博物館学の授業でCoSTEPの受講生と協働する機会があり、そのなかでサイエンスコミュニケーションの技術に触れて感銘を受けたのを覚えています。時代の要請に応える技術でもあるとも思いました。あの頃から現在までに、大きく進展し、多様化しているのではないでしょうか。

サイエンスコミュニケーションが「科学を分かりやすく伝える」ことだけでなく、「他分野の人と対話する」ことでもあるとすると、大学や博物館といった組織や場所によって、その実践方法はケースバイケースで異なってきますよね。

室蘭工業大学はまさにその方法を模索している段階であり、パブリックリレーションズオフィスにはそうした役割も期待されているのだと思います。


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社会的インパクト表現プロジェクトを今後どのように進めていきたいと考えていますか。

これまでにワークショップは2回開催しました。いずれも参加者の学びや気づきを促し、社会的インパクトへの理解を深める機会になっていることはアンケート結果にもありました。今後は地域の方々にも参加していただき、双方向で意見交換ができる対話の場にすることが理想です。そのためには、ワークショップの実施方法を見直す必要があると思っています。

前回のワークショップでは、グループワークの題材に関する説明が不十分だったため、地域から初めて参加された方が理解不足のままディスカッションに参加する形になってしまいました。これは改善すべき点です。

ニュースレターについても同様の課題があります。アンケートを通じて、「自身の取組みが社会的インパクトにどうつながるのかを考えるきっかけなった」などの回答もあり、確かな影響が出始めていることを実感しています。しかし、現時点では学内配布が中心で、学外の方々にはあまり届いていないのが現状です。今後は地域の方々にも読んでいただけるようなものにしていけば良いなと思います。

そのために、サイバコさんの協力を得ながら、山中真也パブリックリレーションズオフィス長をはじめ、メンバー全員でこのプロジェクトに取り組んでいるところです。



 
 
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