KPIだけで「目指した変革」は計れるか?
- Junko Wada

- 7月25日
- 読了時間: 2分
正直に白状すると、私は小学生のころ、授業を全くまじめに聞いていない子どもでした。興味がもてない授業はもっぱら絵を描いたり物語を作ったり。それも集中できないときは、いまこの瞬間、私の行ったことのない外国ではどんなことが起こっているのだろうと想像していました。例えば誰かがくしゃみをしたその瞬間、世界中で同時に何人くしゃみをしているだろうか、とか。
そんな私が高校時代から好きな本が『もの食う人びと』です。世界各地を旅して食べた「辺境飯」についてつぶさに記され、世界の一般人はいったいいま何をやっているのかに関心があった私に、「食べる」という人類共通の営みを通じて世界のリアルな日常を教えてくれる本でした。
「世界」「国」などと言うといわゆるステレオタイプのようなイメージしかわきません。でもそこには私と同じ人間が、食べ、眠り、怒り、喜び、生きているのだという強烈な感覚は、いまの質的研究への関心へとつながります。

質的研究は、いま起こっている現象に対してインタビューや観察などの定性(的)調査を通じて、数値では表現しにくい人々の経験や価値観といった情報を集め、人間心理や文化の文脈を考慮して分析し、社会現象の背景にある「意味」を見出す研究です。数値ではとらえきれない「変化の質」「関係性の変容」「意味の再構築」といった社会的インパクトの可視化にもつながります。
大学や自治体、企業等におけるさまざまな事業ではKPIや定量指標が求められます。しかしそこに質的な視点を加えることで「本来目指した変革」と「達成された成果」の間の乖離を埋めることができます。
たとえば、
“事業を通じて「自分も社会を変えられる」とエンパワメントされた感覚を得た”
“つながりのなかった人と新たに自発的な連携を始めた”
“拾われていなかった声が施策に反映されることで、信頼や希望が再構築された”
こうした変化を可視化することができます。
KPIや定量指標は「何が起きたかの一部」を示すにすぎません。事業によって生まれた意味・関係・信頼の再構築といった目に見えにくい変化を掘り起こし、事業の本質的価値を見い出す質的調査を、サイバコでは「プロジェクト評価」としてサービス化しているところです。ぜひご相談ください。



