今週、8月7日に国立科学博物館がクラウドファンディングを呼びかけ話題となりました。開始1日余りで3億円以上の支援が集まりました。クラウドファンディングは、近年多くのサイエンスコミュニケーションプロジェクトでも注目集める資金調達の手法です。その特徴と、他の資金調達との違いを紹介していきます。
クラウドファンディングとは
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ファンドレイジングの種類
ファンドレイジングとは、そもそも非営利団体などが事業に必要な資金を社会から集める手段です。資金調達や資金開拓ともいいます。
その手法には主に4つのやり方があるといわれています。
まず、有名なものとしては寄付があります。「寄付」は活動支援型のファンドレイジングです。団体の活動に必要な資金を寄付や支援会員の会費として募り、社会活動を行います。そして社会活動の成果を支援者に報告します。会員や寄付者への返礼は、それぞれの団体によって自由に取り決めることができます。
同様の寄付でも、自治体がその寄付を代行し、実施するのが「ふるさと納税」です。ふるさと納税の場合、活動に直接寄付ができる場合もあれば、子育て支援など大きなカテゴリーで寄付する一部が支援したい機関に回る場合もあります。通常の寄付控除よりも控除割合が大きく、寄付も最近はオンラインで簡単に完了し、自治体からの返礼品も受け取れるといったメリットがあり、人気があります。一方、活動団体の直接の収入になるわけではないため、直接支援ができないという課題があります。
一方、今回、話題になったクラウドファンディングはアイデア駆動型の寄付です。まだ実施されていない活動でもアイデアとして共有し、その実現のために支援者に寄付を募ります。クラウドファンディングには、支援したアイデアから生まれた商品やサービスをリターンとしてもらえる購入型と、寄付型、そして株式のように活動の運用益をリターンとして受け取る金融型があります。また、活動資金が集まらないと活動しない「All or Nothing」と募った寄付の目標に届かなくても支援された範囲で行う「All In」があります。
最後に、同じアイデア共有でも自治体の補助金、助成金に申請し、審査を受けて資金を提供してもらうというファンドレイジングもあります。こちらはアイデアの社会的意義や資金計画の妥当性を公平に評価してもらえるという一方、申請書の作成、また提供側のルールに則った運用、成果報告の提出など、活動団体側の負担が大きいという面もあります。
国立科学博物館のクラウドファンディングは本当にクラウドファンディングでよかったの?
ここまで説明すると、国立科学博物館の今回のクラウドファンディングは、通常のクラウドファンディングとは異なることが分かります。今回のクラウドファンディングでは高騰する光熱費等の費用切迫から、国立科学博物館のコレクション保管を適切に行うための資金を募る目的でした。
クラウドファンディングのサイト
これは新規のアイデアというより、国立科学博物館の業務の一環であり、クラウドファンディングの成功の可否で中止できるものではありません。今回、クラウドファンディングで呼びかけたことは、大きな反響を呼び、一定の広報成果はあったと考えられます。ただ、恒常的な活動をクラウドファンディングのような短期的かつ不安定な調達方法で集めることには限界があるでしょう。クラウドファンディングに頼らなければならないほど、国立科学博物館の経営が切迫していることは、我が国の大きな問題ですし、この戦略には限界があることを活動主体側も、支援者側も理解しなければなりません。
ファンドレイジングにおけるサイエンスコミュニケーターの役割
国立科学博物館のクラウドファンディングは短時間に成功しましたが、クラウドファンディングであっても目標額に届かない場合もあります。海外ではプロジェクトの平均達成率が22.4%だといわれています。ただ、NPOのクラウドファンディングに強いRady forは達成率は7割ほどだと自身のサイトでうたっています。またアカデミアのクラウドファンディングに特化したAcademistは達成率は約85%とされています。科学技術に関連するプロジェクトは比較的クラウドファンディングには相性がいいとも考えられます。
ただ、成功するクラウドファンディングでは、プロジェクトの丁寧な説明や魅力的な見せ方を工夫する必要があるといいます。また、もともとクラウドファンディングは若年層からの支援が多いとされていますが、高額な寄付は年齢が比例して増えていくとのデータもあり、適切なファンドレイジングの計画を立てることも必要です。
プロジェクトの発信や、ファンドレイジングの戦略構築など、サイエンスコミュニケーターにもできることはあるかもしれません。
[参考文献]
CAMP FIRE Academy 魅力的なプロジェクトの作り方
日本ファンドレイジング協会 寄付白書 2021
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