サイエンスコミュニケーターの仕事とは?
- Pro SciBaco

- 26 分前
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サイバコフェロー 奥本素子

サイエンスコミュニケーターってどんな仕事?
サイエンスコミュニケーション能力は「職業」ではなく、「職能」と言われています。科学と社会をつなぐサイエンスコミュニケーションの「能力」は多くの職業で必要だけれども、「職業」として独立して必要な場面は多くない、そういう意味も含まれているのかもしれません。実際に、サイエンスコミュニケーターが社会で広く活躍しているという印象を持っている方は少ないでしょう。
職業であれ、職能であれ、サイエンスコミュニケーターとして活躍されている人はどのようなキャリアを渡り歩き、どのような活動に従事しているのか、体系的に調査した事例は多くありませんでした。
コンピテンシー調査で探るサイエンスコミュニケーターの「職能」
私と、大分大学の小林良彦さん、サイエンスコミュニケーション協会の牟田由喜子さんは、サイエンスコミュニケーターの活動を、コンピテンシー研究の立場から調査しました。コンピテンシーとはいわゆる職能のことです。サイエンスコミュニケーションが日本に導入されたのは2000年代初頭。私たちは10年以上、サイエンスコミュニケーターとして活動している方を熟達者として定義し、調査しました。
今回は、ボトムアップでコンピテンシーを調査するため、行動結果面接法(Behavioral Event Interview;以下、BEI)という調査を行いました。BEIの要点は、過去に経験したもっとも重要な出来事(主に成功体験2~3、失敗体験2~3)を語ってもらい、そこでの行動と結果を分析することによって、事実ベースで職能を確認する部分です。
調査から明らかになったサイエンスコミュニケーターの「職能」
調査の結果、熟達したサイエンスコミュニケーターは、組織の中でとても特異な活動を行っていることが分かりました。サイエンスコミュニケーターは指示されたことを行っているわけではなく、まず組織の中の課題を分析し、その課題を解決するための戦略を立て、それを実行するためのチームを作り、多様なステークホルダーと交渉しながら課題を解決していました。

あれ? サイエンスコミュニケーターと言えば、科学と社会をつなぐために、科学をわかりやすく社会に発信したり、対話を促す仕掛けを作ったりしているというイメージを持っていた方も多いかもしれません。
もちろんそのような活動も行っています。ただ、現時点での課題のためにどのような発信が必要か、いつ、だれが、どのような内容を発信するのかを決定するところから、サイエンスコミュニケーターは考えているという点が、今回の調査で明らかになりました。本調査では、サイエンスコミュニケーションの活動が2段階あることが明らかになりました。
まず、サイエンスコミュニケーターは現実の課題を分析し、課題を活動目標にまで概念化する、目標ベースで活動を組み立てていました。この戦略のフェーズが第1段階です。次にサイエンスコミュニケーターは多様なステークホルダーを理解しながら、公式、非公式をまたいだ多角的チームを編成し共創のためのコーディネーションを通して課題を解決していました。
名前のない仕事に向き合うこと
サイエンスコミュニケーターのつなぐ活動は、結果としてつなぐのではなく、活動が始まる前から課題と活動をつなげ、また活動の過程においても様々な人を巻き込みながら実施していることが分かりました。逆に言うと、サイエンスコミュニケーターの仕事は課題を解決するためだったら、どんな人でも、どんな形でも、行われます。その多様性が、サイエンスコミュニケーターの仕事を把握することを難しくさせているのかもしれません。
また、サイエンスコミュニケーションは今見えている課題ではなく、潜在的にある課題にアプローチをしているようです。なので、本来ならばサイエンスコミュニケーションは必要だと思われる段階ではなく、必要だと思われていない段階から始める活動なのでしょう。
社会が複雑化して、多様な人々との共創が求められる現代において、定義できない「名前のない仕事」が増えています。そこに向き合うサイエンスコミュニケーションは、わかりにくいですが、実はとても必要な仕事と考えられます。
【引用文献】
奥本 素子/小林 良彦/牟田 由喜子
熟達した科学技術コミュニケーターが持つコンピテンシー : コンピテンシー・ディクショナリーを用いた分析,科学技術コミュニケーション,2025-08,37,1-16,
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390868438927183104,https://doi.org/10.14943/114635



